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2010年 研究開発篇

次世代エネルギー研究の新拠点「パワーシステム研究所」誕生 地球温暖化防止への切り札、「スマートグリッド」への貢献を目指して。

 2010年1月、今後急速な進展が予想される再生可能エネルギーの利用拡大と電力インフラ分野の 技術変革に対応する研究開発を手がける「パワーシステム研究所」がWinD Lab内に誕生しました。
クリーンなエネルギーの効率的な供給システム「スマートグリッド」をはじめ、 エネルギー・環境技術を軸に新事業と新市場の開拓に挑む研究活動について所長の伊藤が語ります。

WinD Lab(ウインドラボ)
パワーシステム研究所長
兼 次世代超電導開発室長
理学博士
 伊藤 順司
研究なくして、イノベーションなし、イノベーションなくして成長なし。
 2010年4月1日に着任した伊藤所長。直前まで、住友電工と包括的な協力協定を結ぶ独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)のイノベーション推進担当理事を務めていました。現在のパワーシステム研究所(PS研)と産総研との間に大きなギャップは感じないと言います。「産総研の研究は企業との連携を前提に、成果を製品として社会に出していくことを重視していました。研究はビジネスになって初めて実を結ぶ、という考えです。PS研も同じ。研究とビジネスが非常に近く、成果が新事業に結びつくように研究者がビジネスモデルまで作らなければなりません。基礎研究からビジネスに向けてのシームレスな活動こそ、ダイナミックなイノベーションにつながると私は考えています。イノベーションとは成長のための変革です。それではPS研のイノベーションとは一体何か。私たち研究者が新製品を開発し、それが社会に受け入れられ、住友電工の新しい事業が大きく育ち、当社の持続的な発展に貢献することだと考えています」。

詳しくはこちら産総研との協力協定締結

次世代エネルギーのあるべき姿、「スマートグリッド」への貢献。
 PS研の主な取り組みの一つが「スマートグリッド」です。これはより効率的で信頼性の高い、そしてよりクリーンなエネルギーの供給システムを意味するもの。「この研究は、いま地球が直面している資源・エネルギー・環境、三つの大きな問題に対する答えになると考えています」と伊藤所長は語ります。「PS研の研究ミッションには三つの柱があります。一つめはパワーコンディショニングシステム。『スマートグリッド』の中心となるのは、太陽光や風力などの再生可能なエネルギーです。これら自然まかせのエネルギーは、発電した電力を実際に使える電力として整える必要があります。そのシステムがパワーコンディショニングシステムで、PS研ではこのシステムに付帯する技術と製品の開発に取り組んでいます。二つめは蓄電池。エネルギーを使える電力に変換した後は、必要な時に使い、そうでない時は貯めるという技術がなければエネルギーがムダになってしまいます。三つめはエネルギーの流通に関連する技術と製品。

薄膜超電導線材薄膜超電導線材

エネルギーを流通させる電線自体も、より抵抗の少ない高効率なものにしていく必要があります。超電導線材の研究はその一例です。いずれも現在実用化に向けて、さまざまな実験を行っているところです」と伊藤所長。「つまり私たちが目指すのは、地球というこの惑星が持つ自然のめぐみを使って多様なエネルギー源を確保すること、そしてCO2の排出を抑制し、環境に最も優しいエネルギーの供給体制をいち早くつくる、ということなのです」。

スマートグリッドの技術研究要素 情報通信技術との融合による多様な制御技術、電力供給の双方向化への対応を目指します。

研究開発のスピードアップとコスト削減を実現するオープンイノベーション。
 「またPS研が取り組んでいる重要なテーマにコストの問題があります。私たちは製品のコスト削減を、設計技術でクリアしようと考えています。たとえばパワーコンディショナーが三つの大きな部品からできていたとする。この部品一つをまるごと省くことができればコストはグンと下がる。そういう開発設計ができないか、ということです。技術でコストを下げるためには思い切りが必要です。私たちはシステムで勝負する研究所。まったく新しい分野で部品をゼロから開発していたらマーケットでは遅れを取ってしまいます。優れた部品があればどこからでも調達する。そして最終製品で勝つ。これがPS研の運営方針であるオープンイノベーションの考え方です。グループ企業であれ、大学であれ、優れた技術や人材はどんどん活用してスピードをアップさせ、いいものを早く世に出すことに徹します。たとえば超電導開発。次世代の超電導線材の研究では、産総研、東京大学、九州大学、PS研の四者の共同研究が2009年10月からスタートしました。産学官一体となったオープンイノベーションの一例といえるでしょう」。
伊藤 順司
住友電工の底力を見せることのできる研究所に。
 住友事業精神にも「技術の重視」とあるように、住友電工にとって研究開発こそが企業の持続的な発展の原動力です。伊藤所長も「技術によって会社を成長させていくという企業風土をとても感じる」と言います。「住友電工は研究者にとって恵まれた環境です。研究者に対する期待も大きい。私たちはそれにきちんと応える義務があります。私は企業には戦略的な会社の底力を見せる部署が必要だと考えます。住友電工がグローバルな規模で社会貢献できるリーディングカンパニーとなるために、研究とビジネスを一体化させ、PS研からイノベーションを起こしたいと考えています」。

研究所1

研究所2

環境負荷の少ないエネルギー発電を支える、次世代機器の開発に取り組んでいます。

弘津 研一 パワーシステム研究所
機器・システム部長

弘津 研一

 パワーコンディショナーの一種である「多機能インバータ」の研究開発を担当しています。これは太陽光発電の発電施設には欠かせないもので、現在世界の需要に供給が追いついていない状態と言われています。日本政府は2020年までに太陽電池2,800万kWを全国に設置する方針を打ち出しました。また海外で大規模な太陽光発電施設の建設計画も進んでおり、今後もニーズの拡大が予想されます。私たちは独自の技術でこれまでにない情報通信機能と電圧調整機能を付加し、また新素材の適用で機器の長寿命化と小型化を目指しています。電力インフラは情報機器などと違い、20年〜30年という長いスパンにわたって使用され、社会の基盤となるものです。導入後の失敗が絶対に許されないだけに、製品化にいたるまではまだまだ耐久性や信頼性の慎重な検証が必要です。環境負荷の少ないエネルギーの効率的な流通に一日でも早く貢献したい。その思いを胸に、これからもスピード感を持って努力していきたいと思っています。

「多機能インバータ」(試作品)

「多機能インバータ」(試作品)

「多機能インバータ」(試作品)
発電した直流電力を交流電力に変換する装置。電圧調整機能や通信機能を付加し、
発電量の変動など自然まかせのエネルギーの問題点をカバーします。
※2010年7月取材
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